2022-01-01から1年間の記事一覧

夏目漱石 こころ

高校3年生の時、現代文の教科書に夏目漱石の「こころ」が載っていた。「先生」の手紙の中の一部であったように思う。「こころ」はそれなりに長い小説だから、その時にはその部分だけを読んで、全体は敬遠して読まなかった。大学入試の勉強もあったから、も…

オイディプス王

今回は、ギリシャ悲劇の古典として有名な、ソフォクレスのオイディプス王である。 ギリシャのテーバイで王の息子として生まれたオイディプス。しかし、息子はやがて王を殺すという不吉な神託が降り、王は息子の両足に留め金を刺して羊飼いに山中に捨てるよう…

芥川龍之介 河童 或る阿呆の一生

前々回のモーパッサンで、芥川のことを書いたので、今回は芥川の作品について取り上げる。新潮文庫の「河童・或阿呆の一生」である。 本作には芥川の晩年に書いた6つの短編が収められている。芥川の死因は自殺である。三十五歳という若さであった。 「大導…

もし僕らのことばがウィスキーであったなら

私をウィスキーの世界に導いてくれた本である。この本を読んで、ボウモアを買って飲んでみたのだが、最初は全然美味しく感じなかった。独特の匂いも好きになれなかった。慣れてくると、味も匂いも気にならなくなった。著者もおすすめしているように、半分を…

脂肪のかたまり

「モオパスサンは氷に似ている。もっとも時には氷砂糖にも似ている」芥川龍之介「侏儒の言葉」 脂肪のかたまりとは、小柄で肥満して丸々と太った娼婦のあだ名である。フランス語で、ブール・ド・スュイフという。作品中は本名のエリザベート・ルーセではなく…

モリエール 人間嫌い

十七世紀フランスの劇作家・モリエールの喜劇である。当時の社交界の悪風習への批判、諷刺の込められた作品。 主人公・アルセストはセリメーヌという女性に熱を上げている。しかしセリメーヌに言い寄っている男性は他にも何人かおり、実はセリメーヌは言い寄…

キルケゴール 死に至る病

何年か前に、デンマークを旅行したことがある。皆さんは、デンマークの有名人をご存知だろうか?まず最初に思いつくのは、アンデルセンだろう。その次に来るのが、哲学者キルケゴールである。今回は、キルケゴールの「死に至る病」について書こうと思う。 ま…

ゴリオ爺さん

パリの下宿、ヴォケー館を舞台に、二人の娘に全財産をつぎ込んで死んでいくゴリオ、出世欲に燃える学生ラスティニヤック、物語後半で、脱走した徒刑囚であることがわかるヴォートランなどの交錯する人生活劇が描き出されている。下宿屋を物語の背景に使った…

若きウェルテルの悩み

婚約者のいる女性に恋をした青年の青年らしい恋、また、求めても手に入れられぬ恋の苦しみと絶望。青年ならば誰にでもありうる恋愛の悩み、相手に対する感情、相手がこうあってほしいという空想・妄想。成就する恋愛ばかりでは人間としての成長は得られぬ。…

ボヴァリー夫人

サマセット・モームによる世界の10大小説のうちの一つである。フランス北部の都市、ルーアン近郊が舞台となっている。 田舎医者のシャルルに見初められた美人のエンマは恋を知らずにシャルルと結婚する。夫婦には子供も生まれ、幸せな生活を送っているよう…