モンジュイックの丘

パブロ・ピカソ


 私が子供の頃にバルセロナ・オリンピックがあり、マラソンのゴールがモンジュイックの丘にある競技場でした。有森裕子選手が銀メダルを獲得していました。それで、モンジュイックという言葉が強烈に印象に残っていました。バルセロナに行く機会があり、その時にモンジュイック地区にも行ったので、その時のことについて書こうと思います。

 モンジュイック地区へは地下鉄が便利です。バルセロナの中心であるカタルーニャ広場から地下鉄の1番線でスペイン広場駅へ行きます。駅を出るとスペイン広場があり、大きなラウンドアバウトとなっています。中央には彫刻があります。この彫刻といい、ベネチアの塔といい、モンジュイック地区の建物はどれも大きいです。バルセロナ中心地からは少し距離があるので、大きな建物も建てやすいのかもしれません。サグラダ・ファミリアも、街の中心部からは離れた新市街にあります。

 坂を上ると、マジカ噴水があります。私が行った時期は水不足で、噴水ショーはやっていませんでした。コロナ禍の中ですので、観客で密になるのを避けるための措置なのかもしれません。噴水の奥にカタルーニャ美術館があります。この建物は外から見ると美術館には見えません。日本でいうと、国会議事堂や、神宮外苑聖徳記念絵画館に似ています。美術館はカタルーニャにゆかりのある芸術家の作品を中心に集めています。キリスト教の芸術作品が多い印象です。キリスト教以前の、ギリシャに由来する作品もありますが、少数です。日本でもおなじみの、ピカソやミロ関連の作品が見どころです。作品数もそれなりに多いです。疲れた時は、美術館内のカフェで休むと良いでしょう。私は歩き疲れて、休憩がてら立ち寄り、軽食とエストレージャのビールを頼みました。バルセロナ地ビールであるエストレージャは、街のあらゆるところで飲むことができます。私はバルセロナに滞在中、毎日ビールを飲んでいました。バルセロナの気候にも合っているし、とにかく美味しいのです。

 美術館を見終えて、美術館の裏にまわります。さらに丘を登ると、オリンピックスタジアムがあります。バルセロナオリンピックでメインスタジアムとして使われていたところです。この時期は、サッカーのFCバルセロナのホームスタジアムであるカンプノウが改修工事中のため、バルセロナのホームスタジアムとなっていました。隣にはオリンピック博物館があります。様々な競技の写真が飾られていました。入場者はそれほど多くないようです。

そこから、さらに丘を上ります。次に行ったところは、ジョアン・ミロ美術館です。バルセロナ出身の芸術家である、ジョアン・ミロの作品が集められています。ミロの作品は抽象絵画と呼ばれるものに分類されます。おそらく、同時代のピカソシュールレアリストたちに影響を受けたものです。絵画以外に彫刻作品も残しています。この美術館の2階のテラスからの眺めは素晴らしかったです。カウチも置いてあり、しばらく休憩することができました。

 丘はさらに続きます。頂上のモンジュイック城まで、もう少しのところまで来ました。途中にケーブルカーの駅があります。今回はケーブルカーには乗らず、あえて歩いてモンジュイック城まで行きました。最後の急な坂を上り、やっと城に到着。モンジュイック城の入り口には、いまだに大砲が置かれています。普通のイメージの城というよりも、城砦といえるでしょう。モンジュイックの丘は古くからバルセロナの市街を守るための戦略的要塞でした。逆に、この丘を占領され、市街に向けて砲弾が発射されたこともあるようです。城からの眺めは素晴らしいです。バルセロナ港湾都市なので、タンカーやコンテナが海の方に見えました。海鳥が沢山いました。ただ、海側よりも、山側の景色が良かったです。ここから見ると、サグラダ・ファミリアも小さく見え、宇宙に向けて飛び立とうとしているスペース・シャトルのようです。

 頂上まで登ってしまえば、あとは丘を下るだけです。下るのはあっという間です。下りは、ケーブルカーを使い、地下鉄駅のあるところまで下りました。だいたい半日もあればモンジュイック地区を回ることができます。

 バルセロナは、スポーツも盛んであり、芸術、建築も一級品の街です。まずガウディ作品を見るべきですが、それが終わったら、モンジュイックの丘に行ってみてはいかがでしょうか。