カサ・バトリョ

 

カサ・バトリョ前景


 バルセロナでガウディの建築を見てきました。その中で印象に残ったのが、Casa Batllo(カサ バトリョ) でした。こちらの建築は、バルセロナのメインストリートであるグラシア通りにあります。隣にはこれもまた有名な、建築家ホセ・プッチ・カダファルクによる、Casa Amatller(カサ・アマトリェール)があります。カサ・バトリョはガウディによる建築です。とても人気のある建築なので、予約しないと中に入れないでしょう。予約は15分刻みになっており、建物の前には列ができていました。

 ガウディは自然からインスピレーションを得て建築したといわれており、カサバトリョに関しては、海がインスピレーションの源となっています。建物の外観を見るとバルコニーは魚の骨のようです。建物の側面は平面ではなく、波打っています。建物内部の壁も同様に波打つデザインです。驚くべきことに、カサ・バトリョの内部では、直線や平面が全く見られません。普通の住宅の常識を覆しています。ガウディは、建物の設計だけでなく、家具のデザインも行いました。このような波打った住宅には、普通の家具は合わないでしょう。自分の建築した建物に合う家具まで自分で作成していました。カサバトリョに関しては、建築設計ではなく、もともとある建物のリノベーションでしたが。

 ガウディは自然から着想を得るだけではなく、意外に思うかもしれませんが、カテナリーなどの数学を使ったデザインも行なっていました。家具に関しても、人間工学に基づいた設計になっています。そういった、アーティスティックなデザインだけではなくサイエンスも取り入れているところに、ガウディ作品の隠された魅力があるのかもしれません。

 カサバトリョやカサ・ミラはオーディオガイドが充実しており、日本語のガイドもありました。入り口でオーディオガイドを受け取り、中に入ります。ポイントごとに、自動でオーディオガイドが再生されるようになっています。エントランスは海底にいるような作りになっており、ジュール・ベルヌの世界観を表現しています。1階から2階に続く階段の手すりは大きな恐竜の背骨のようです。階段を上がって2階に行くと、バトリョ氏の書斎と暖炉のある部屋があります。その部屋を抜けてさらに進むと、サロンとも言うべき大きな部屋があります。この部屋は入り口の扉といい、グラシア通りに面した大きな窓といい、カサバトリョで最も象徴的で個性的な部屋と言って良いでしょう。この部屋にいる人々は、グラシア通りを通る人々を見、また、通りの人々から見られることを楽しんだようです。2階には、建物に囲まれた裏庭とも言うべき場所があります。グエル公園と同じく破砕タイルで作られた壁面があります。ベンチも置いてありました。私はベンチでしばらく休憩しました。

 カサバトリョには中央にパティオがあります。パティオはまた、吹き抜け構造になっていて、各部屋に日光と空気が行き渡る仕組みになっています。吹き抜け側面の青い色は上階に行くほど濃い青となります。これによって、上階から下階まで光が均一に行き渡るそうです。

 上階に移動します。追加料金で見れる部屋もあり、一応見てみましたが、見なくても損はしないと思います。次は屋根裏部屋です。屋根裏部屋は倉庫や洗濯室として使われていました。屋根裏部屋の通路には60個近い白の連続したカテナリー 曲線が使われており、見た目にも美しいです。そこから屋上へ移動します。

 屋上にはバーもあり、また、夜にはコンサートが開かれています。建物正面から見えるファサードの「龍の背中」と呼ばれる部分の裏側や、多彩色の曲がった形をした煙突があります。機能性と芸術性の両方を追求するガウディらしさが詰まっていると言えるでしょう。

 屋上まで上ったら、あとは階段を降りていきます。階段を降りながらアルミニウムのチェーンによって作られた隈研吾氏の作品を見ることができます。この作品もカサバトリョ同様に波打つデザインとなっており、色も上から下に行くにつれてだんだん黒色が濃くなっていくように作られています。サグラダファミリアの外尾悦郎氏以外にもバルセロナで活躍している日本人がいることに驚きです。そのうちにサッカーのFCバルセロナに移籍して活躍する日本人も出てくることでしょう。階段を地下まで降りると、Gaudi Cubeと呼ばれるCube(立方体)の部屋で6つの壁面全てがCGの画像で埋め尽くされる体験をして、カサバトリョでの全てのアトラクションは終了となります。

 カサバトリョは家族連れで見に来ている人が多かったです。どちらかと言うと、子供向けのアトラクションなのかもしれません。美人な女の子も多く来ていました。美術館に行くと、美人が多いのと似ています。美術作品を鑑賞しつつ、美人を鑑賞することもできてお得です。美術や芸術はそれ自体、特に実生活で役に立つものではありません。しかし、仕事をするにしても汚くやるのと、美しいやり方でするのとがあるでしょう。美への意識が少しあるだけでも、実生活や仕事に違いが生まれてくることと思います。